研究概要 |
本研究では、赤腐れ病耐性ノリ種苗を作出する目的で、ノリ赤腐れ病起因真菌Pythium porpohyraeに対する抗真菌タンパクを探索し、有明海より採取した水試料からP.Porphyrae細胞壁分解細菌13株を分離した。最もP.porphyrae細胞壁分解活性が強かったPseudomonas sp. PE2は、キチン分解酵素、β-1,3;1,4-グルカン分解酵素およびβ-1,3-グルカン分解酵素を産生していることが明らかとなり、これら酵素遺伝子について発現クローニングを行った。クローニングした遺伝子の解析を行ったところ、これらの酵素は、多様な多糖結合能を有する機能領域を有しており、試験した数種の多糖に対して特異的な結合活性を示した。中でも、β-1,3(4)-グルカナーゼAは最も重要な酵素であることが明らかとなった。また、P.poryphyraeに対して抗真菌活性を有する分離海洋細菌Streptomyces sp. AP77の培養上清から抗P.poryphyraeタンパク(SAP)を精製し、SAPの性状について解析を行い、SAPが、3つのサブユニットにより構成されていること、各サブユニットは既知のタンパクとそれぞれホモロジーを有することを明らかにし、SAPの抗P.porphyrae活性の作用機序は、P.porphyrae細胞膜の透過性に関与する可能性を示唆した。 以上、本研究により、上記抗P.porphyrae酵素並びに抗真菌タンパクの有用性が示唆され、これらタンパクの遺伝子導入による耐病性ノリ種苗の確立が期待された。
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