研究概要 |
米価下落と生産調整拡大のもとで生産調整への対応が稲作経営規模によって異なることを2000年農業センサス結果や実態調査によって検討した。大規模稲作経営では一部には複合化の動きがあるものの概して生産調整離れと計画外流通米の経営面で積極的な位置づけ,一方,小規模層での不作付け,耕作放棄での対応が進展していることを明らかにした。そして,大規模稲作経営の米価下落による所得減が激しく,そのため経営の複合化・多角化と米単作による規模拡大と米の販路拡大という二つの対応に分かれている。その背景には,食糧法下のもとで計画外流通米の増加と定着にある。とくに計画外流通米が中間流通段階を省略した多様な流通形態を生み出し消費者や生産者ニーズに応え,その結果計画外流通米は生産者にとって全階層,全地域での重要な販売形態となったからである。とはいえ,大規模稲作経営は米価下落と大豆,麦作策の不安性により不安定な状況に置かれている。その要因は,稲作経営安定対策の補填も部分的であり,さらに,現行の生産調整金が土地への助成のため助成金の多くが地主の手取となっているからである。したがって,稲作経営の発展には,価格下落に対する経営安定政策の確立とりわけ生産調整が経営の影響を与えるので水田営農に視点を与えた助成金体系の確立が必要となっていることをを論証した。さらに,水田営農確立のためには,水田営農への助成や経営安定対策に加え,米と麦,大豆等への価格,所得水準の是正や水田営農方式の経営的,技術的確立等の諸条件が必要なことを検討し,その条件を明らかにした。
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