地域振興目的で官民共同出資して設立された第三セクターは、官の公共性と民の経営ノウハウを兼ね備えた組織として期待されていた。しかし、第三セクターの経営は、必ずしも当初期待されたとおりには運営されていない場合が多い。その理由は、官の公共性と民の営利性という相反する出資目的に根本的原因がある。また、第三セクターは、そもそも公共性が高いが収益性の乏しい事業を運営していることから、継続的に官から直接的・間接的に資金援助等が得られたため、経営側のモラルハザードの問題も大きい。 近年、問題を抱えている第三セクターに対して資金援助等を行ってきた国・地方自治体の財政状況が悪化したことにより、経営的に問題のある第三セクターの見直しが全国的に進められている。しかし、民間活力の高い都市部はともかく、民間活力の少ない農山村においては、第三セクターを活用した地域振興策は一定の成果を上げてきたことは否定できない。そこで、第三セクター以外の地域振興策を模索する必要性がある。 このような状況において、第三セクターに代わる新たな民間活用施策として、イギリスで考案され一定の成果を上げているPFIがある。PFI(Private Finance Initiative)は、1992年にイギリスで誕生した新しい社会資本整備手法であり、我が国においても透明かつ効率の良い仕組みとして期待されている。 このような期待のもとに、PFIに関する研究が日本においても盛んになってきている。しかし、現在行われているPFIに関する研究の大部分は、民間活力が高い大都市圏、すくなくとも地方中核都市が中心であり、農山村におけるPFIに関する研究はほとんどなされていないのが実態である。そこで、本研究は、現在PFI研究の日の目が当たっていない農山村における公共サービスの提供方法としてのPFIについて研究を実施したものである。
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