研究概要 |
自然堆積地盤の透水性には,通常,異方性が存在すると考えられるが,バーチカルドレーンが施工された地盤では,圧密による主な排水は水平かつ放射状に生じると推測されるので,水平方向圧密係数を正確に評価する必要が生じる.本研究は,バーチカルドレーンを念頭に置き,粘性土地盤の透水性の異方性,もしくは,水平方向と鉛直方向の圧密係数の相違を考察することを第一の目的とした.多種類の材料を用いて実験を行った結果,どの材料でも排水方向による圧密係数の大きな相違は生じず,概ねc_h=1〜2c_vの結果となった.また,c_h/c_vあるいはk_h/k_vの圧密圧力に対する顕著な依存性は見られなかった.ただし,圧密圧力の変化に対して,比較的一定値を保つ傾向がある.また,t^n法と逆解析法によって決定された圧密定数を比較した結果,後者による方が,より明確に排水方向の相違による圧密係数あるいは透水係数の相違を得ることができた. 最終的に,現場の沈下実測値を逆解析することによって,実地盤の水平方向透水係数を同定し,実験結果と比較している.ここで,実験値は通常の標準圧密試験結果であるため,鉛直方向排水の試験結果である.実地盤は,空間的に大きな不均質性を有し,深度によって応力状態も異なるため,パラメータの非線形性を考慮する必要がある.筆者らは,これらのパラメータの空間的な変動性と圧密途中における非線形性を表現するために,統計的な非線形圧密モデル(SNCMと表記する.)を開発し,これに基づいた逆解析手法を提案している.この手法を,サンドドレーンが施工された実軟弱地盤における沈下実測値に適用している.さらに,情報化施工を念頭に置き,同定されたパラメータに基づき,将来圧密挙動予測を行っている.
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