研究概要 |
(1)土地利用,自然条件,社会経済条件に関する全国2階層データベース(レベル1:市町村,レベル2:都道府県)を整備した。このデータベースを用いて,県レベルの単層重回帰モデル(第1章,目的変数は農地変化率と宅地変化率),市町村県の2階層のマルチレベル重回帰モデル(第2章,目的変数は農地面積率)を適用した。地形要因,農業経営条件,都市化要因が農地面積のシェアを決定する中心的要因であった。次に,階層的統計モデルについて,都道府県レベルの残差項を目的変数,同レベルの社会経済的要因を説明変数とする回帰分析を行ったところ,農協のリーダーシップ,労働市場の展開水準,農業投資の水準,農村コミュニティの紐帯の強さなどの地域レベルの社会経済的要因が農地面積を左右することが明らかになった。このように,マルチレベル・モデリング・アプローチによって,単層モデルよりも少数の指標から精度のより高いモデルを構築できるだけでなく,単層では捨象された地域特性を汲み上げることに成功した。 (2)一方,農地面積に関する京都府2階層データベース(レベル1:30年間,7時点の時系列データ,レベル2:集落)を整備した。集落単位に過去30年間の農地変化を追跡し,その変動の特性を主成分分析及びマルチレベルモデルを用いて明らかにした。 (3)一方,エージェント・ベースド・アプローチを採用して,集落レベルの農地貸借と耕作放棄をモデル比し,CALL (Community-based Agricultural Land Lease Model)モデルと名付けた。地域特性に応じてCALLモデルのパラメータを調整すると,それぞれの集落の土地利用変化を適切に記述するモデルとなる。かかる集落土地利用モデルを用いて,米価や農地の仲介・斡旋,土地改良などの政策の効果を明らかにした。なお,(2)のマルチレベルと(3)の集落土地利用モデルを連動させることが今後の課題である。
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