研究概要 |
干拓堤防直下およびその周辺部の有明粘土の理工学的性質を実験的に把握するとともに,弾塑性有限要素法(FEM)による干拓堤防などの挙動解析を行い,解析結果と動態観測結果などの比較を通して,堤防本体や地盤の変形メカニズム,解析手法の適用性について検討した。 その結果,干拓堤防直下の有明粘土(沖積層)は,堤体荷重のため大きな圧密沈下を起こしているが,これより深い地盤の沈下量は,有明粘土層のそれと比較してかなり小さいこと,および堤防直下の有明粘土層は,ほぼ正規圧密状態にあることなどが分かった。また,有明粘土のベーンせん断強度とフォールコーン貫入量の間に固有の関係があることや,JIS法とフォールコーン試験による液性限界の差異は,液性限界が大きく(100%以上に)なると大となることを確認した。 有明粘土の強度増加率と内部摩擦角は,不攪乱試料の方が練返し試料よりそれぞれ15〜20%,5〜20%小さくなることや,不攪乱試料のHvorslev(ボシュレフ)の強度定数は粒度組成の影響を強く受けること,および有明粘土の非可逆比は0.6〜0.8の範囲にあり,粒度組成や塑性指数の影響をあまり受けないことが分かった。また,定ひずみ速度載荷による圧密試験からは,練返し試料の圧密特性はひずみ速度の影響を受けないが,不攪乱試料の圧密降伏応力(圧縮曲線)はひずみ速度の影響を受け,圧密降伏応力は,ひずみ速度の対数値の増加に対して直線的に大となることを確認した。さらに,正規圧密過程における練返し試料と不攪乱試料の静止土圧係数は,ほぼ一致することなどが明らかとなった。 一方,弾塑性FEMを用いた消波ブロック設置後の干拓堤防の挙動解析と遠心模型実験が実施されているフーチング支持力問題の両解析結果が,地盤の挙動を的確に捉えていることから,本研究で用いた解析手法は,軟弱地盤上に築造されることが多い干拓堤防の挙動解析へ十分適用できることが分かった。
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