研究概要 |
本研究では,まず,安定解析に必要な強度定数c,φを得るために物理的・鉱物学的性質を異にする地すべり土について強度測定試験を行った.次に,残留係数を導入した三次元安定解析手法について検討し,提案した. 1.c-φ関係図において,c=37.5kN/m^2,φ=35.0°付近から正規圧密強度付近にまで及ぶ領域が強風化・破砕泥岩のピーク強度ゾーンとして設定された.正規圧密強度はc軸上のφ=23〜30°の範囲にあり,残留強度はφ=9°〜17°の範囲で与えられた.φ≦10°のような低い値は残留せん断面が鏡肌を呈するほどに発達した試料で得られた. 2.シルト・砂分が多く,粘土含有量が20%より少ない試料でもピークから残留への明瞭な強度逓減が認められた.強度逓減量は,配向性鉱物総量との関係において凸型変化を示した.地すべり土の応力〜変位曲線は,含有される鉱物総量に基づいて4タイプに類別できた. 3.通常の地すべりの安定解析において、実験で得られるピーク強度,完全軟化強度(正規圧密強度)および残留強度の単独の適用は,安全率が過大または過小であると計算・評価してしまうため,すべり発生の事実が説明できない。提案された安定解析手法により,すべり面の平均強度定数が適切に算定され,二次元解析結果と比べてかなり小さいことが検証できた.また,本手法により,すべり時に動員されるピーク強度と残留強度の関与領域がすべり面全域で区分・表示できた.
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