研究概要 |
平成13年度の実験において,1,2-プロパンジオール生成能を有する乳酸菌Lactobacillus buchneri NK01を分離した.このL.buchneriをトウモロコシホールクロップに接種してバッグサイロを調製し,ヤギを用いて採食量,ルーメン液性状および血液性状の変化を調べた.また,L.buchneriに好気的変敗を防止する機能が見出されたため,イネ科牧草への接種試験や有望菌株のスクリーニングを行った.得られた結果は以下のとおりである. 1.L.buchneriの接種によりサイレージ中に1,2-プロパンジオールが生成した.この変化は,乳酸の減少および酢酸の増加をともなっており,無接種サイレージに比べpHはわずかに上昇した.1,2-プロパンジオールの生成量は10g/kg DMであり,ボトルサイロにおける生成量(50g/kg DM)よりかなり少なかった.また,L.buchneriを接種したサイレージは,無接種サイレージよりも開封時の酵母が少なく,好気的安定性が高いことが判明した. 2.L.buchneri接種サイレージの採食量は,無接種サイレージと変わらなかった.ルーメン液および末梢血中に1,2-プロパンジオールは見出されず,生体内およびルーメン微生物により速やかに代謝されると考えられた.1,2-プロパンジオールを飼料に添加して与えた場合と異なり,ルーメン液の酢酸/プロピオン酸比は高くなる傾向を示した.抹消血のグルコース濃度および遊離脂肪酸濃度は変化しなかった.以上のことから,L.buchneriは1,2-プロパンジオールの生成要因ではあるが,L.buchneri接種によって生じる1,2-プロパンジオールは採食行動に影響しないと考えられた. 3.トウモロコシサイレージからL.buchneri NK02を分離した.NK01とNK02をトウモロコシホールクロップに接種して変敗防止能を比較したところ,NK02株の方が低濃度でも安定した効果を示すことが判明した.また,両菌株ともイタリアンライグラスおよびフェストロリウムでも好気的変敗を防止した.
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