研究概要 |
家畜の飼料原料には多量の植物性穀実が使用されている。そのリン酸濃度は乾物当たり0.4〜1.0%で,その多くがフィチン態リン酸の形で貯蔵されている。このフィチン態リン酸は,豚や鶏などの非反芻家畜には消化分解できないために大量のリン酸が家畜排泄物として環境中に排泄されている。家畜におけるリン酸の吸収効率を高めるためには,家畜に吸収利用されやすいリン酸の形態にすることも一つの方法である。そこで,家畜飼料の原料として多く用いられているソルガム,トウモロコシおよびダイズについて子実の全リン酸とフィチン態リン濃度の品種間差を調査した結果,穀実の全リン酸に対するフィチン酸濃度の割合はソルガム496品種では83〜47%,またトウモロコシ188品種では63%〜97%,さらに,ダイズ140品種では43〜80%であった。このことから,一部の品種を育種材料に用いることによってフィチン態リン酸割合が低く,フィチン態リン酸割合の低い品種の育成が可能であることが示唆された。また,フィチン酸の蓄積は,リン酸施肥量により影響を受け,さらに子実成熟過程,特に子実成熟後半でその蓄積が大きくなることを明らかにした。フィチン態リン酸合成の初発酵素であるmyo-inositol 1 phospahte synthase(MIPS)の遺伝子をエンバクより単離した。エンバクの開花後1週間目の未熟種子と開花1ヶ月後の未熟種子から,mRNAを精製し,これを鋳型として逆転写反応(RT-PCR)を行い,エンバクMIPS遺伝子をクローニングし,塩基配列を決定した(DDBJ : ABO59557)。このMIPS mRNAの発現状況を解析し,MIPS遺伝子は,開花日より誘導されることを明らかにした。
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