研究概要 |
ブタ子宮に存在するprostanoid受容体種及び合成酵素(cyclooxygenase, COX)について薬理学的、生化学的手法を用いて解析し以下の結果を得た。(1)未経産、発情前期ブタ子宮筋(角部)には収縮性EP1,EP3,FP, TP受容体及び弛緩性EP2,DP, IP受容体が筋層依存性に分布していた(収縮性受容体は縦走筋、弛緩性受容体は輪走筋に高密度に分布)。FP, DP, EP3受容体mRNAの筋層依存性分布もPCRにより確認された。これらブタ子宮に存在する受容体サブタイプは、ヒト子宮で報告されているものと一致していた。(2)DP、FP、TP、EP3受容体作動薬の反応性は、子宮の部位(角部、体部、頸管部)で異なっていた(特に縦走筋、輪走筋では部位差は認められない)。即ち、縦走筋において収縮性prostanoidの反応性は、角部>>体部=頚管部、弛緩性prostanoidの反応性は、頸管部=体部>>角部であり、反応性勾配は収縮性、弛緩性prostanoidでは逆になっていた。この成績から、ブタ子宮では角部の収縮活性が頸管部よりも高くなり、角部から頸管部に向い減少していく内圧勾配が形成されると考えられた。(3)非妊娠子宮ではCOX-1のみが筋層依存性(縦走筋>輪走筋)に発現し、角部から頸管部に向かい減少する勾配を示した。COX-2の発現は非妊娠子宮では認められず妊娠子宮でのみ観察された。また妊娠子宮では、FP受容体を介する収縮反応の増大が認められた。このことは、妊嫁期、prostanoid受容体がup regulationされると共に合成酵素が誘導されprostanoidが大量に産生され子宮運動調節に重要な役割を果たしている可能性を示唆した。(4)COX及びthromboxane合成酵素阻害薬は、子宮縦走筋の自発性収縮高を著明に抑制した。このことより子宮自発性収縮の発現には、内因性prostanoidが関与している可能性が窺われた。 本研究から、ブタ子宮はヒト子宮に対するprostanoid受容体作動薬の作用を推定するための有用なモデルになりうること、prostanoid受容体、合成酵素の部位依存性分布によりブタ子宮では角部から頸管部に向かい減少する内圧の勾配が構成されており、自発収縮の発現、内容物の輸送に関与していることが明らかになった。Prostanoid受容体、合成酵素の発現は妊娠期では変化しており、このことはprogesterone, estradiol-17B等が発現調節に関与していることを示唆している。
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