研究概要 |
1.ラットおよびウサギ心臓より単離した心房筋・洞房結節細胞を用い,膜電位固定下にイオン電流の解析をおこなった.その結果,これらの細胞には既知の電位依存性カリウム電流以外に背景外向きK電流が存在することが明らかとなった.ラット心房筋においては4回膜貫通型のTASKチャネルが,ウサギ洞房結節細泡においては未知のチャネルタンパクがこれに関与している可能性が高い.さらに,これら外向き電流が小動物の短い活動電位プラトー相に,少なくとも部分的には関与していることを明らかにした. 2.T型カルシウム電流の関与に関する検討:洞房結節自動能に対する,mibefradil, amlodipine, Ni^<2+>等のカルシウム拮抗薬の効果を解析した.AmlodipineはL型チャネルのみを抑制するのに対し,MibefradilはL型及びT型チャネル共に抑制する.またMibefradilは洞房結節細胞の自発活動に対し著明な徐脈効果をもたらすことから,T型チャネルがペースメーカー電流の一員をなす可能性が示唆された.ただし,従来T型チャネルのブロッカーとして用いられてきたNi^<2+>では徐脈が認められないことから,mibefradilの徐脈作用はT型チャネルだけでは説明がつかない.ジヒドロピリジン感受性の持続性Na電流等,T型以外の標的イオンチャネルの存在が示唆された. 3.遅延整流カリウム電流に対する薬物の効果:中枢神経作用薬であるrisperidoneは急速活性型遅延整流カリウム電流を選択的に抑制することを明らかにした.また,吸入麻酔薬であるsevofluraneは緩徐活性型遅延整流K電流を選択的に折制することを明らかにした. 4.イオンチャネル・イオントランスポーターのキネテイクスや電流密度を組み込んだ洞房結節細胞のシミュレーションモデルを作成した(論文投稿中).
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