研究概要 |
本研究では、胃酸分泌細胞基底側膜の細胞防御Cl^-チャネルの分子実体を明らかにすること、ならびにCl^-チャネルの酸化的ストレスによる新規抑制機構を明らかにすることを目的とし、以下の新規知見を得た。 1.細胞防御Cl^-チャネルの分子実体が、CLCA1である可能性について検討するため、ウサギCLCA1を気道上皮より新たにクローニングした。細胞防御Cl^-チャネルは、[Ca^<2+>]_i上昇によって活性化されるという点でCLCA1と類似した性質を示したものの、胃酸分泌細胞にCLCA1遺伝子は有意に発現していなかった。 2.CLC-5塩素イオンチャネルの胃酸分泌細胞における分布を、特異的抗体を用いて検討したところ、CLC-5蛋白質は、H^+,K^+-ATPaseとほぼ一致した分布を示した。そして、免疫沈降による実験から、胃細管小胞において、CLC-5が、H^+,K^+-ATPaseと分子会合していることを突き止めた。 3.Dihydrofluorescein diacetateをロードした、ウサギ胃酸分泌細胞において、インターロイキン-1β(IL-1β)は、細胞内活性酸素産生を顕著に増大させることを見出した。この上昇は、抗IL-1β抗体およびIL-1リセプターアンタゴニスト(IL-1ra)により消失した。また、Rho-kinase特異的阻害剤(Y-27632)は、活性酸素産生上昇を抑制した。細胞防御Cl^-チャネルの活性はIL-1βにより抑制され、この抑制は、抗IL-1β抗体、IL-1ra、Y-27632により消失した。IL-1βが、細胞防御塩素イオンチャネルを抑制する機構には、Rho-kinaseを介した酸化的ストレスの増大が関与しており、IL-1βによる細胞傷害とチャネル抑制とが密接に関連しているものと考えられた。 4.大腸粘膜においても,NO/cGMP経路を介して活性化されるCl^-チャネルが存在することを見出した。
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