研究概要 |
【はじめに】我々は門脈-肝臓領域Na^+受容機構に関し,受容機構(NKCC1),求心路,中枢経路,遠心路,効果器および生理学的,病態生理学的役割等を解明してきた。門脈-肝臓領域は腸管から吸収されたNa^+が体循環系に回る前に先ず通過する場所であり,長期にわたる高食塩食摂取によりこの領域がNa^+に曝されることになり,門脈-肝臓領域Na^+受容器感度および受容器発現が影響を受ける可能性がある。本研究ではこの可能性を調べた。また,最近我々が開発したMn^<2+>造影剤を用いたT_1-weighted MRIにより,中枢のNaCl感受性部位を同定した。この方法はMRI造影剤としてCa^<2+>アナログであるMn^<2+>を用い,神経細胞興奮時にCa^<2+>チャネルから流入するMn^<2+>によるT_1緩和時間変化によりコントラストを作成する。このため,血行動態に依存しない,Ca^<2+>依存性細胞興奮を直接検知することができる。 【方法】Sprague-Dawleyラットを用い,7〜11週齢にかけて高NaCl食(3%,Na^+)負荷を行った。RT-PCR, Western blotにより肝臓でのNKCC1発現を調べた。また肝門脈内高張NaCl溶液負荷に対する,肝臓求心神経活動応答を調べた。100mM MnCl_2を静脈内投与しながら,内頚動脈あるいは側脳室から高張NaCl溶液を投与し,前後でBioSpec spectrometer (ABX-4.7/40,Bruker, Karlsruhe)を用いて,proton imageを撮影した。 【結果】4週間の高食塩食負荷により,NKCC1のmRNA発現は59%,タンパク量は49%へと有意に減少した。肝門脈内高張NaCl溶液投与に対する肝臓求心神経活動応答は50%以下に低下した。高張NaCl溶液内頚動脈投与により,皮質,室傍核,視索上核,外側手綱核などで有意な信号強度の増加が見られた。また,側脳室投与では側脳室周囲からこれらの部位に時間遅れをもって,信号強度の増加が起こっていることが分かった。これらの興奮部位はFosの結果とよく一致していた。
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