研究概要 |
筋交感神経活動MSNAと皮膚交感神経活動SSNAの共通性・相違性を明確化するために,環境温の変化を外乱とした体温調節機構応答を解析した.自律神経の変動計測にはmicroneurographyによりMSNAとSSNAを同時測定した.従来の研究で明らかとなった体温調節能の優劣(環境温変化に対する核心温変化の一定性)は交感神経反応が大きくMSNAとSSNAが共通性を持つことが重要であり,互いにたfeedbackあるいはfeedfoward系の一部として相補的に連携する,つまり体温調節は閉ループ制御だけでは機能せず,開ループ制御も兼備する必要がある.本研究ではこの機能を安静時におけるMSNAとSSNAとの相互相関のタイムラグの対称性を優劣の指標とした.8名の被験者に人工気候室内で両側の脛骨神経からMSNAとSSNAを同時記録し,室温25℃,15℃,40℃の各環境で20分間滞在した際の相互相関と最大エントロピー法による周波数を解析した.体温調節能の優劣によらず各環境下において,心拍周期,呼吸周期,10秒(Mayerリズム),20秒周期のリズムに同期するスペクトルピーク(SP)が認められた.体温調節能優良者は心拍周期成分以外ではMSNAとSSNAに共通性を有していた.寒冷時にはMSNA, SSNAともに亢進し,Mayerリズムと同期した.暑熱時では心拍・呼吸由来周波数でSPの増大が認められた.暑熱下においてはMayerリズムが著現したが,循環血漿量減少により心循環器系が支配的になるためと推測された.体温調節能不良者は,暑熱下の各SSNAスペクトル帯域での分散が大きく,心循環器系成分に同期するSSNAのSPは体温調節能の優劣で異なっていた.心拍および20秒周期に同期するMSNAのSPは体温調節能の優劣により差異を生じ,SSNAによる末梢血管調節性放熱に依存することが示唆された.
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