研究概要 |
1.塩素イオンポンプ55kDaサブユニット(ClP55)の局在:GST-ClP55融合蛋白質特異抗体は、大脳皮質および海馬の大型神経細胞膜およびその樹状突起の細胞膜に強く反応し、小脳のプルキンエ細胞でも同様に反応した。また。免疫電子顕微鏡法でも海馬の神経細胞膜上に金粒子が確認され、ClP55は、膜貫通領域をもたないが細胞膜にアンカーした状態で細胞膜に存在することを明らかにした。 2.アンチセンスオリゴヌクレオチド導入実験:ラット胎児脳初代海馬神経細胞にClP55cDNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを2日間導入後、細胞膜ClP55蛋白質の発現量は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより有意に(34%)抑制された。塩素イオン感受性蛍光色素により測定した、アンチセンスオリゴヌクレオチド導入細胞の細胞内塩素イオン濃度は、センス導入細胞(5〜6mM)と比較して、約4倍高い濃度(18〜24mM)を示した。また、アンチセンス導入細胞膜分画のCl^--ATPase活性は、センス導入細胞(9.93μmol Pi/mg protein/hr)と比較して、約31%(6.84μmol Pi/mg protein/hr)の抑制を示した。このことより、ClP55は、塩素イオンポンプのサブユニットとして細胞内塩素イオン濃度調節に重要な役割を果たしていると考えられた。 3.55kDa(ClP55)以外の塩素イオンポンプサブユニットcDNAのクローニング:ラット脳より細胞膜画分を可溶化し、CMセファロース、MonoQカラムによるHPLC分離後、塩素イオンポンプ/ATPase活性を保持する分画を用いて、以下の方法によるClP55以外の塩素イオンポンプサブユニットを検索した。抗体結合法によりClP55以外の蛋白質は、5種類(72,62,51,49,46kDa)存在し、蛋白結合法:によりClP55以外の蛋白質は3種類(62,51,49kDa)存在することが明らかになった。 4.ClP55とATPase蛋白との結合性の確認:上記の塩素イオンポンプ粗抽出分画をATP結合カラムに吸着し、ATP溶液で溶出した。得られたサンプルのウエスタンブロッティングを行なった結果、抗ClP55抗体によって検出したところ、ATPase蛋白とともにClP55が存在することが明らかになった。以上に結果から、塩素イオンポンプは、ClP55とATP結合蛋白質を含めて少なくとも4種類の異なった蛋白質より成ることが明らかとなった。
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