研究概要 |
平成13年度から15年度の3年間にわたる本研究では,膵臓における腫瘍(粘液産生膵腫瘍,内分泌腫瘍,膵癌)を中心に,免疫組織や分子生物学的検索から引き出されたデータをもとにそれを既存のhematoxylin-eosin (HE)染色標本にいかにしてフィードバックさせるかを検討し,実際の日常の病理診断に直結できるような所見を見出すことを目的として行なった. IPMN症例では,比較的丈の高いvillousな構造やnuclear overlappingの所見を加味することがIPMA, IPMB, IPMCの鑑別に重要と思われた.欧米でいうpancreatobiliary typeは今回の検討では少なく,かつ局所的の所見として認められるに過ぎなかった. Endocrine tumorに関しては,明らかな異型細胞を呈するものは別として,HE所見のみから悪性と言い切れる所見は認め難かった.但し,腫瘍の一部がductal differentiationを示す所見はduct-endocrine tumorとの異同を含め,興味深い所見と考えられた. PanINに関しては,MUC1が悪性の可能性を示唆する良いマーカーである可能性が示唆された. 膵癌症例に関しては,p53,MIB-1の陽性率が高く,このような症例では悪性を示唆する核所見が明瞭であった.浸潤部における高分化腺癌に関しては,intaglandular necrotic debris (IND)が悪性を示唆する所見として有用と考えられた. 以上述べてきたように,HE所見へのフィードバックはIPMNや膵癌例ではある程度目的を達せられたが,endocrine tumorに関しては今後解決していくべき部分が多いと思われた.
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