研究概要 |
大腸鋸歯状腺腫(SA)のAPC、E-cadherin遺伝子の異常とメチル化、ミスマッチ修復遺伝子hMLH1のメチル化、および粘液形質を、管状腺腫(TA)と比較した。 1.APC異常:exon1〜7のmutationとpromoter領域のmethylationは、SA[3%(1/34),19.2%(5/23)]がTA[40%,(4/10),90%(9/10)]に比べ、有意に低頻度であった(p<0.005)。 2.E-cadherin異常:exon6〜9のmutationとpromoter領域のmethylationは、SA[6%(2/34),68%(23/34)]とTA[0%(0/10)、50%(5/10)]で有意差はなかった。SAに見られたmutationは、胃型形質を持つ分化型胃癌と同様であった(codon418-423の18-base pairの欠失)。 3.hMLH1:SAでは、promoter領域のmethylationが88%(30/34)に認められた。 4.粘液形質:MUC5AC発現(胃腺窩上皮型)は、SA[93.5%(29/31)]、TA[90.5%(19/21)]間で有意差はなかったが、MUC6発現(胃幽門腺型)は、SA[71%(22/31)]がTA[14.3%(3/21)]に比べ、有意に高頻度であった(P<0.0001)。 5.まとめ APC、E-cadherin異常ともにSAの発生には関与していないが、ミスマッチ修復遺伝子異常が関与している可能性が残された。SAはTAに比べ胃幽門腺型粘液形質が特異的であった。SAのE-cadherin mutationは胃型形質を持つ胃癌と同パターンのmutationであり、胃型粘液形質を発現する腫瘍には、臓器を越えて共通した遺伝子異常が存在する可能性が示唆された
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