研究概要 |
種々のがんでのエピジエネティック変化を検討するため大腸癌・胃癌・腎癌・白血病細胞株および正常腸上皮細胞株を、AzaC、TSA及びその両者で処理し、蛋白レベルで76の癌関連遺伝子の産物の発現変化を検討した。その結果RAGE, IL-8,E-cadherin, MMP9, EGFR, MLH1,Rho, c-metに明らかな変化が見られた。これらの変化は細胞や遺伝子により異なっており、概括することは困難である。 次に、RAGE及びそのligandであるHMG1でエピジェネティック変化を検討した。胃癌細胞株では8株中MKN45のみに発現がなくTSAまたはAzaC処理にて発現が誘導されたが、メチル化特異的PCRではプロモーターSp1サイトにCpGメチル化が認められた。HMG1は、本来クロマチンタンパクでありその分泌機構は不明であった。培養細胞のTSA処理により、ヒストンアセチル化によりHMG1は核内から細胞質内に移動することが認められた。このようにエピジェネティック変化は細胞内蛋白局在にも影響を与えた。 癌におけるエピジェネティック変化は極めて多様であり一定の方向性を見いだしにくい。そこで、癌よりも多様性が少ないと予想される非癌部粘膜の癌関連遺伝子発現とエピジェネティック変化をヌードマウス大腸癌モデルを用いて検討した。癌周囲粘膜上皮細胞の核ヒストンは低アセチル化状態にあり、p53,VHLの発現は抑制されていた。HIF-1αのユビキチン分解に関与する両因子の発現抑制の結果HIF-1αのタンパクレベルは増加しており、VEGF発現亢進の原因のひとつと考えられた。また、大腸癌周囲粘膜では、プロモーターメチル化によるp16,MLH1,MGMT発現低下が認められた。このような、ヒストン低アセチル化・プロモーターメチル化の原因として癌細胞が産生する増殖因子が重視された。
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