研究概要 |
腎血管筋脂肪腫において観察される各種の血管構造を,その構造別に大型の筋性動脈,小型の筋性動脈,筋性静脈,毛細血管およびstaghorn型/sinusoid型血管に分類し,その形態を整理した. 増殖性の平滑筋細胞(nVSMC)が同心円状に増殖し集簇性の血管形成を示す部分の形態を解析し,その病理組織学的分析から,既存の動脈組織にnVSMCが浸潤している可能性を示唆する所見を得た. 日本人女性の場合,2つのHUMARA遺伝子の長さの差が小さくアガロースゲルやポリアクリルアミドゲルによる電気泳動では解析に困難を来すことを確認した.そのため共同研究者の施設に設置されている遺伝子シークエンサー「日立SQ5500」を用いて最低の3塩基対の差でも判別し,量的バランスの変化も解析可能とする環境を整備した. 次に,共同研究者の施設に設置された「LM 200 Microdissection顕微鏡」を活用し,病理標本プレパラートから目的の細胞を選択的に正確なサンプリングを行い,研究対象となる腎血管筋脂肪腫の血管成分およびnVSMCをmicrodissectionにより別個にサンプリングしDNAを抽出し解析を行った. 腫瘍性の判定を下す際,片方のピークが完全消失している場合だけではなく,元々の正常部分に置ける2つのピークのバランスを判定し,一方が有意に減少した場合も腫瘍性と判断すべきことがわかった. これらの技術整備に基づき,目的であった腎血管筋脂肪腫に対し,腫瘍内の血管壁平滑筋および増殖性の平滑筋細胞を別々に採取して,そのHUMARA遺伝子の検討を行った. 顕微鏡的に形態が正常な血管の平滑筋は正常組織と同じくポリクローナリティーを示し,非腫瘍性成分であることが確認された. nVSMCは,制限酵素Hap II処理により片方のピークが消失または有意に減少を示し,これまでの報告通り,腫瘍性であることが示された. Microdissectionによる微小な選択的組織サンプリング方法および遺伝子増幅のためのプロトコールはほぼ整備され,これからさらに各成分の検討を行うと共に,腫瘍性か反応性か議論のある疾患において本手法を用いた解析を開始する予定である.
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