研究概要 |
【目的】甲状腺切除標本を用いた検討により、Galectin3の発現の頻度と強度は、腫瘍の組織型あるいは悪性度により異なり、特に術前に鑑別が困難な濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別に有用ではないかと推察されている。今回,Galectin3の発現を術前の穿刺吸引細胞診で得られた材料について、切除標本と同様の検討が可能であるかを確かめるために、捺印細胞を用いて検討を行った。【方法】2002年1月から2002年12月までに,鹿児島大学第一外科にて甲状腺腫瘤摘出術あるいは、甲状腺切除術を行った症例の28病変を対象とした。摘出後腫瘤中心部に割を入れ、シランコーティングプレパラートを用いて捺印細胞標本を作製した。99%エタノールに固定した後に30分間自然乾燥し、染色までの間は-20度にて保存した。Galectin3の染色はKawachiらの方法を用いて行った。腫瘤の組織型はホルマリン固定標本による最終病理報告によるものとした。判定可能であった細胞集塊を確認できた症例は25例で、3例4病変については、判定可能な上皮細胞が認められなかったため検討から除外した。25例における29病変33細胞塊を評価した。(乳頭癌の切片の一部に正常濾胞構造と見られる細胞塊を確認できたため、正常濾胞の4細胞塊として染色性の検討に加えた)。採取した細胞塊の内訳は、Normal;4,adenomatou goiter;5,Follicular adenoma;3,Follicular Carcinoma:1,Papillary Carcinoma;20であった。Galectin3の染色性は4段階に分類した(0=absence,1=weak,2=intermediate,3=strong)【結果】(1)galectinの染色強度の内訳は、以下である。〔Normal〕0:n=3,1:n=2. 〔Adenomatous goiter〕 0:n=5,1〜:n=0. 〔Follicular adenoma〕0:n=1,2:n=2, 〔Follicularcarcinoma〕0:n=1, 〔Papillarycarcinoma〕0:n=6,1:n=4,2:n=7,3:n=3【考察】検討数が少なかったため、Follicular carcinomaとFollicular adenomaの鑑別に有用かどうかを検討するには至らなかったが、症例数を確保できたPapillary carcinomaについては細胞塊での染色性も十分判定できるものであった。今後同様の方法での検討を重ね、更に術前に穿刺吸引法にて採取した材料を用いた検討を追加することにより、Galectin3の染色性が甲状腺腫瘍の詳細な術前診断における有益性を確立することができるものと推察する。
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