研究概要 |
平成13年度研究において3cm以下の肝癌における悪性度を判定する病理組織学的パラメーターを検索し、肝癌の癌組織内での腫瘍マーカーであるAFP(アルファプロテイン)の発現が指標となることを明らかにした。悪性度を検索した理由として肝癌は切除後に高率に再発してくるが、多中心生発生を来す症例も多く、単純に生存期間の比較だけでは悪性度の判定が困難であるからである。平成14年度は肝細胞癌の悪性度に更に注目して検討し、肝癌の肉眼形態と転移巣との関連を検討し、肉眼形態により門脈侵襲や肝内転移頻度が異なることを明らかにした。平成15年度は血管新生因子angiopoietin、Tie 2(angiopoietin receptor)の発現に関して検討を行った。対象は3cm以下肝癌46例である。分化度は高分化型6例、高分化型癌組織を内包する中分化型肝癌10例、ほぼ均一な中分化型30例である。 腫瘍径は22.6±5.6mm SDであった。Angiopoietinは46例中18例(39.1%),Tie 2は27例(58.7%)に発現が見られた。Angiopoietinの発現とTie 2の発現には相関関係は見られた。またangniopoietn及びTie 2の高発現は中分化型肝癌に多く見られた。肝癌は高分化癌組織と発生し脱分化により動脈血流の豊富な中分化癌組織が主体を占めるようになり転移を来すとされていることからは、angiopoietin-Tie 2経路がその血管新生のプロセスの一翼をになっていることが伺われた。しかし細動脈との有意な相関が見られなかったことは、同じ動脈血流の豊富な中分化癌組織でも血管新生に関してはVEGFやinterleukin-8等の種々の因子が関与しているものと思われた。今後は特にangiopoietin高発現例の臨床的な特長を明らかにしたい。
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