研究概要 |
カベオリンは細胞膜上のカベオラ構造と密接に関連した膜蛋白で,1992年の発見以来,細胞レベルの物質輸送に果たす役割が検討されてきた。我々は,カベオリンが内分泌細胞におけるホルモン原料の取り込みや分泌刺激の受け取りに果たす役割を解明するために,免疫組織化学的手法で検索を行った。剖検およびラットの正常状態における甲状腺濾胞上皮細胞と副腎皮質細胞の細胞膜,細胞質に,下垂体の核にカベオリンの存在を光学顕微鏡レベルで確認した。次に電顕的にカベオラ構造を検索したが明瞭な構造は確認できず,免疫学的検索でも反応は不明瞭であった。下垂体についてはラットを用いて,正常とプロラクチン分泌過剰状態を比較検討したところ,いずれも核にカベオリンの存在が示された。膜蛋白であるカベオリンが細胞質や核に陽性を示したことから偽陽性を疑い技術的な点を検討したが,他の組織では起こっていない現象である。また,細胞膜以外におけるカベオリンの存在が報告がされたことも合わせて、細胞膜での物質交換という我々の予測とは異なる機能を果たしている可能性が示唆された。一方,甲状腺腫瘍症例については良性・悪性ともカベオリン1が常に均一に陽性,カベオリン2は症例により発現の仕方が異なっており腫瘍化における役割の違いが示唆された。しかし、以上の観察では反応にばらつきがある。今後、有意差の有無を明らかにするために、CHOやGH_3などの培養細胞においてウエスタンブロッティングでカベオリンを確認し,電子顕微鏡レベルで免疫染色について条件を設定した。今後,これらの実験系を用いて分泌状態によるカベオリン分布の変化を形態計測で明らかにしていく計画である。
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