研究概要 |
殺菌による生体防御に必須な因子である食細胞NADPHオキシダーゼの主要構成成分であるシトクロムb558重鎖(以下CYBBと略す)の遺伝子上流-53塩基にあるPU.1結合部位(-53PU.1)の点変異による転写異常が主因と思われる慢性肉芽腫症(CGD)患者におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)著校機序を解明するために、CYBB遺伝子の+12から-115bpの領域もつ野生型(p-115/+12W)及び-53PU.1変異型レポーターを前単球細胞株U937に導入し一過性発現法にてIFN-γによる誘導を比較したところ、-53PU.1変異型レポーターにおいても野生型とほぼ同等の効率でプロモーター活性の誘導が認められ、かつその活性値は野生型の非誘導時の4倍以上、すなわち活性酸素による通常の生体防御に十分な量のCYBB産生が期待しえる活性が示された。この事実は+12から-115bpの領域に-53PU.1非依存性のIFN-γによるCYBB転写促進に関与するシスエレメントが存在するとを示唆するものであるので+12から-115bpの領域に着目し解析を行った。その結果,P-115/+12Wのプロモーター領域を段階的欠失させることにより本誘導に関与する領域を解析したところ、遺伝子上流-100塩基にあるGASと呼ばれる部位(以下-100GAS)と遺伝子上流-88塩基にあるISREと呼ばれる部位(以下-88ISRE)が協調してIFN-γによるCYBB遺伝子転写の活性化を行っていること。並びに,-100GASにはIFN-γによる遺伝子転写誘導に重要な転写因子であるSTAT-1αが結合し,-88ISREにはIFN-γ処理によって新たに合成された転写因子IRF-1が結合することが明らかとなったので,これらの結果を総合して-100STAT-1α/-88IRF-1機構を提唱し報告した。さらに,この機構に関与するCoactivatorの解析を行ったところ,これまでの報告から予想されるCBP/p300は部分的な関与にとどまり,他のCoactivatorによる新しい機構が関与することを示唆するデータを得た。
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