研究概要 |
ギャップ結合は、細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たし、細胞の増殖および分化に密接に関係していると考えられている。そして、部分肝切除後及び肝傷害後などの肝再生時においては、肝細胞のギャップ結合蛋白の発現及びその機能は、一過性に低下することが知られているが、詳細なメカニズム及びその意義については未だ不明である。さらに肝再生時におけるタイト結合の変化については、タイト結合構造物を構成する主な蛋白であるclaudinが、最近発見されたため、その詳細な変化はよく分かっていない。一方、肝細胞の増殖あるいは増殖抑制にMAPK, PI3K, p38MAPK経路によるシグナル伝達が重要な役割を果たしていることも明らかとなってきた。そこで今回我々は、肝再生時におけるギャップおよびタイト結合の発現調節及びその役割を解析する目的で、培養肝細胞を用いて解析した。ギャップ及びタイト結合高発現初代培養ラット肝細胞を用いて、増殖刺激のオンオフによるin vitro再生肝モデルを作製し、シグナル伝達経路であるMAPK, PI3K, p38MAPK経路の各インヒビター(PD98059,LY294002,SB23850)を処置した結果、培養肝細胞の増殖はPI3K経路に非常に依存し、増殖刺激によるギャップおよびタイト結合の発現およびその機能の変化は、MAPKおよびp38MAPK経路で複雑に調節されていた。次に、内在性のタイト結合蛋白を高発現しているマウス肝細胞株を用いて、細胞周期のM期にみられるmidbodyを詳細に検索した結果、肝細胞のタイト結合構造物を構成する膜貫通蛋白であるoccludin及びclaudin-1のmidbodyへの濃縮がみられた。以上の培養肝細胞に認められたギャップおよびタイト結合の発現変化及びその調節機構は、肝再生においてもみられる可能性が高いと考えられた。
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