研究概要 |
Notchシグナル伝達系は、様々な細胞分化調節機構として重要で、肺上皮細胞や肺癌の分化決定に重要な働きをしていると考えられる。また、その分化決定は、basic helix-loop-helix因子を調節することにより遂行されると思われる。 Notchシグナルの意義を明らかにするため幾つかの実験を試み、以下の点を明らかにした。1)マウス肺組織における、Notch1-4、Notch ligand(Jag1,Jag2,Dll-1)の発現をNorthern blot法と免疫染色法により検討した。神経内分泌細胞はNotchの発現は見られず、Mash1依存性にDll-1の発現を示した。一方、非神経内分泌細胞は、Notch1-Notch3,Jag1,Jag2の発現を示した。2)肺小細胞癌と非小細胞癌(腺癌と扁平上皮癌)における、hASH1,Hes1,Notch, Notch lignadの発現を検討すると、神経内分泌への分化を示す小細胞癌は、hASH1,Hes1,Jag1,2,Dll-1陽性であり、非小細胞癌はHes1,Notch1-Notch3,Jag1陽性であった。また、小細胞癌におけるHes1は、発現はあるものの核内に認められず活性化していないと思われた。3)Notch1遺伝子、intracytoplasmic domainのNotch1遺伝子などを導入し、遺伝子改変株の作製を試みた。小細胞癌にNotch1遺伝子を導入することにより、増殖能の低下、神経内分泌分化の消失、腫瘍細胞の上皮化など形態変化が見られ、Notch1はただ単に細胞分化だけでは無く様々な生物学的な機能への関与が考えられた。 これらの研究より、ヒト肺疾患でも、Notchシグナル系やbasic helix-loop-helix因子が細胞分化を中心に重要な働きをしていると思われた。
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