研究概要 |
胸腺サイズが幼児期(6週令)から明白に大きいBUF/mna系ラットと胸腺サイズが小さい2系統のラット(WKYとACI)を交配し、胸腺サイズを大きくするのに2個の優性感受性遺伝子が関与していることを明らかにしてきた。胸腺増大遺伝子はThymus enlargement(Ten)の意味でTen1およびTen2と命名した。 本研究では多型マーカーによる詳細な遺伝子座のマッピングと同領域のコンジェニックラット系統の樹立およびボジショナルクローニン法を用いた形質に関与する遺伝子の同定を試みた。 1)多型マーカーを用いたゲノムワイドスキャニングにより胸腺の大きさを規定する遺伝子が2個存在することを見い出した。Ten1は第一染色体にマップされ、Ten2は第13番染色体にマップすることができた。さらに詳しい解析により、Ten1遺伝子座はD1Ncc39,D1Mgh10,D1Rat168,D1Rat197,D1Got184,D1Got186,D1Got188の近傍OcMまで局在を絞ることができた。Ten2はマーカーが十分でないせいか幅広い低い山型の分布をせばめることが現時点ではむずかしい。 2)Spragu-Dawley(SD)ラットのコスミドゲノムライブラリーを作成し、いくつかの多型マーカーを用いてスクリーニングし、陽性クローンを3個得た。それらの簡単な制限酵素地図を作成し2個はオーバーラップする断片を含むことが判明した。インサートのベクター近傍両端の部分塩基配列を決定し、ベクターの一部のプライマーをPCRにて増幅し、それをプローブとしてライブラリーを再度スクリーニングするということを繰り返した。約80kbをカバーするcontigを作成した。さらに、長い領域のcontigを作成すべくスクリーニングを継続したところ、同一のクローンが複数回とれてきたため、ライブラリーのゲノム被覆度以上に達しているか初期のライブラリー増幅の際偏りが生じたと考えられた。 3)一定の領域の塩基配列決定をしているが、候補遺伝子に行きあたっていない。また、ゲノムクローンDNAを制限酵素で切断しサザンブロットしたものに、mRNAから逆転写した放射性標識プローブでハイブリダイズしたところ、陽性シグナルがえられなかった。ゲノムクローンのカバーする領域が十分でない可能性を考えBACライブラリーの高密度フィルターをスクリーニングし数個の陽性シグナルをえた。それについて解析中である。 Ten1とTen2の近傍マーカーを用いて、それぞれの領域についてのコンジェニックラットを作成中である。退交配ラットでTen1近傍マーカーがBUF型で、離れたマーカーがWKY型の雌雄を選別し交配し、近傍のみをホモにもつ仔を作成する。これを繰り返して第12代に至っている。6週令にてsacrificeし、胸腺・体重比(thymic ratio)とマーカーの相関を詳しく検討中である。
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