研究概要 |
我々はプロフェショナル抗原提示細胞である皮膚ランゲルハンス細胞(LC)・樹状細胞(DC)を標的としたトキソプラズマ分子シャペロンHSP70およびHSP30遺伝子によるワクチン開発を進めている。細胞内寄生体感染症において、LC/DCへのワクチン遺伝子導入は宿主に有効な防御免疫応答を惹起させるための最も重要かつ不可欠な方法であるが、DC分裂増殖をしないため遺伝子導入が難しく、そのベクター開発は困難な研究分野である。我々は既に、トキソプラズマSAG1遺伝子導入皮膚片を用いた遺伝子ワクチン化皮膚移植により、遺伝子ワクチンで活性化されたDonor皮膚片のLC/DCがRecipientの局在リンパ節に遊走し防御免疫低応答性Recipientマウスにワクチン遺伝子産物に対する高応答性免疫応答を惹起させることに成功した(Vaccine,19:2172,2001)。しかしそのワクチン効果はなお充分ではなく、今回DCを標的としたワクチン開発の検討を行った。ただし、DCベクターとして機能が解析・報告され当初導入を予定していたLentivirusは国内ではavailableで無く、代替ウイルスベクターも考えたが安全性から最終的にバクテリアCpGモチーフを組み込んだプラスミドベクターの使用を検討し下記の結果を得た。組み込まれた非メチル化CpGモチーフの合成オリゴデオキシヌクレオチドODN1466(TCAACGTTGA), ODN1555(GCTAGACGTTAGCGT)のinnate immunity誘導能は既に報告されている(PNAS,93:2879,1996;J.Immunol.,169:5590,2002)。用いたプラスミドベクターは強力なSV40プロモーターを有する真核細胞発現ベクターである。 このプラスミドベクターを用いて、トキソプラズマ感染感受性C57HL/6マウスおよび抵抗性BALB/cマウスの腹部皮膚(上皮・真皮上部)LC/DCに遺伝子銃によりトキソプラズマ(T.g.)HSP70、HSP30およびSAG1遺伝子を直接遺伝子導入し、防御免疫誘導能を検討した。その結果、(1)両マウス共、T.g.HSP70遺伝子ワクチンにより感染1週後の急性期および6週後の慢性期の臓器内トキソプラズマ数が著減し、HSP30/SAG1遺伝子に比べて最も著明なワクチン効果が誘導された。(2)皮膚LC/DCの直接遺伝子導入により、筋肉および腹腔内注射に比べて極めて著しいワクチン効果が誘導され、本プラスミドベクターがLC/DCを標的とする遺伝子ワクチンに最適である二とが判った。(3)プラスミドベクターを用いたT.G.HSP70遺伝子ワクチン効果は3ヶ月以上続いた。以上、本プラスミドベクターを用いてvirulent gene T.g.HSP70をTargetとした遺伝子ワクチン樹立に成功し、既に国際誌に報告済みである(Vaccine,2003 in press)。
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