研究概要 |
ウェルシュ菌ホスホリパーゼC遺伝子(plc)のプロモーター上流には3つのphased A-tracts(-66〜-40)が存在し、低温(25℃)で折れ曲がり(ベント)構造を形成する。するとplcプロモーターとRNAポリメラーゼ(RNAP)との接触領域の拡張がおこり転写が促進される。この分子機構を解明するために、phased A-tractsにウェルシュ菌RNAPαサブユニット(CpRNAPα)が結合するかどうか調べた。精製したCpRNAPα(315aa)、CpRNAPαのN末端ドメイン(αNTD,228aa)、C末端ドメイン(αCTD,79aa)を用いて、gel retardation assayとヒドロキシルラジカルフットプリンティングを行い、phased A-tractsにRNAPαCTDが結合することを明らかにした。さらにphased A-tractsとCpRNAPαの複合体の蛍光偏光をさまざまな温度で測定することにより、低温(25℃)ほどphased A-tractsとRNAPαの親和性が増加すること、またUPエレメントと大腸菌RNAPαでも弱いながら同じ傾向があるごとが確かめられた。UPエレメントのminor grooveに大腸菌RNAPαCTDが結合することが知られていることから、phased A-tractsのminor grooveにCpRNAPαのαCTDが結合していると考えられた。(Katayama, S. et al.2001.) 次に、αCTDがphased A-tractsによる低温依存性の転写促進にどれほど貢献しているか明らかにするためにRNAポリメラーゼの再構成実験系を確立して、α2ββ'σとαNTD2ββ'σを作製しようと試みたが、活性をもったRNAポリメラーゼを再構成できなかった。
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