研究概要 |
A型ウイルスでは、2つのNS遺伝子産物(NS1,NS2)のうち、NS2がウイルス粒子内に微量存在することが示されているが、NS1は終始細胞内にとどまる非構造蛋白とされている。昨年度我々は、C型ウイルスでは、NS2蛋白がウイルス粒子内に存在することを示す下記の成績を得た。1.発育鶏卵で増殖させ、酒石酸カリウム密度勾配遠心法により精製したC/山形/1/88株について、NS2に対するウサギ免疫血清をプローブとするウェスタンブロット法により解析したところ、NS2が精製ウイルス標品中に検出された。2.発育鶏卵で増殖させた他の分離株(Ann Arbor/1/50,山形/64,青森/74,奈良/1/86)でも同じ結果が得られただけでなく、MDCKやHMV-II細胞で増殖させたC/山形/1/88株中にもNS2が検出された。3.ラット赤血球への吸着能や抗HE単クローン抗体を結合させたprotein A-sepharoseへの結合能を利用して精製したウイルス粒子もNS2を含んでいた。4.密度勾配遠心法により精製したC/山形/1/88株粒子中に存在するNS2はTPCK-trypsin処理(200μg/ml,30分)に抵抗性を示し、エンベロープ内に存在すると推測された。本年度は、感染細胞の免疫沈降法でNS2とM1が共沈すること並びに精製ウイルス粒子のウェスタンブロット法の成績から、NS2が内部蛋白であるM1と結合していることを示唆する成績を得た。
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