研究概要 |
レトロウイルスベクターを用いたcDNAライブラリー発現系の構築と、それを利用した改良型発現クローニング法の開発ならびにマスト細胞の新規受容体の同定を目的として本研究を行った。 cDNAライブラリー:マウス骨髄マスト細胞のcDNAライブラリーを2種類、レトロウイルスパッケージング用ベクター内に構築した。 間接的発現スクリーニング法: FLAG-DAP12のキメラタンパクをラットミエローマ細胞に恒常発現した細胞(12Y5)を作製した。そこに、DAP12依存性に膜表面に発現するKIR受容体をレトロウイルスベクターで導入し、FLAG-DAP12タンパク質の膜表面への発現を確認した。次にマスト細胞ライブラリーを12Y5に感染させ、DAP-12分子の膜表面発現を指標にFLAG陽性細胞を濃縮し,クローン化陽性細胞を得た。4陽性クローンを得て核酸配列を決めたが,いずれも有意な受容体cDNAではなかった。 直接的発現スクリーニング法の実施:間接的発現スクリーニング法と同時に、次の手順で、従来の発現スクリーニングも実施した。免疫沈降により、DAP-12に会合する膜タンパク分画を大量のマスト細胞から精製し、ラットに免疫して抗血清を作成した。抗血清で上記同様にcDNAライブラリー感染細胞をスクリーニングした結果、多くのマスト細胞由来の受容体分子が同定された。中でも補体関連因子であるDAF、Crry、CR1などの補体活性制御因子、CD43などのシアル酸関連因子が重複して同定された。いずれもDAP-12との会合は示されなかった。 本研究では新規受容体の同定には至らなかった。しかし、成果としては、マスト細胞における補体の制御システム,また,シアル酸糖鎖が関係する制御システムという、マスト細胞の活性化制御の新たな着眼点を提示したことを挙げることができる。
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