研究概要 |
胆道がん(胆のうがんと肝外胆管がん)が、世界でもっとも多いチリで、その成因研究を行っている。今までにチリ胆摘胆汁の突然変異原性の強さが、新潟(多発県)の胆汁に比べ著しく高いことを発見した。一方、国内の胆摘胆汁の変異原性が、胆汁中の遊離脂肪酸(FFAと略す)中、二重結合を有する遊離脂肪酸(palmitoleic acid, oleic acid, linoleic acid, linolenic acid, arachidonic acidで、抑制の意味でIFFAと略す)で抑制されることを発見した。そこでチリ胆汁中のFFA濃度について分析し、日本と比較検討を行った。なおチリでの胆汁採取及び病状聴取は、ソテロデルリオ病院の倫理委員会及び患者へのインフォームドコンセントを得た上で行った。 2001年から約2年間にわたり胆汁を採取し、-20℃で保存した。試料数は男性21例、女性129例、計150例である。胆汁中FFA9種(前述したほか、lauric acid, myristic acid, palmitic acid, stearic acid)について、我々が独自に開発したHPLC法を用いて分析した。 その結果、男女合計で、FFAは6498.7±7686.1μmol/l、IFFAは4117.4±5719.6μmol/l、IFFA/FFAは0.569±0.170であった。国内胆汁に比べFFA, IFFAの総量は多かったが、IFFA/FFAは差が無かった(国内データ略)。FFAの種類別には、IFFAの中のpalmitoleic acidとlinolenic acidの全体に占める割合が、それぞれ1.9±3.9%,1.8±5.6%と少なかった。なお新潟の胆汁ではそれぞれ3.9±2.3%,5.3±2.9%である。 今後の研究として、チリ胆汁で変異原性を抑制するpalmitoleic acidとlinolenic acidが少ないことが発がん性と関連するとの仮説検証、さらに我々が別に行った研究では、チリ胆のうがんのリスクファクターとして唐辛子摂取が上がっており、かつ辛味成分のカプサイシンに脂肪酸の腸管吸収抑制作用があることから、唐辛子摂取がこれらIFFA吸収を抑制するといった仮説検証が必要である。
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