ネブライザーの微生物汚染に起因する院内感染の防止を目的として、病院で使用中のネブライザーの微生物汚染状況および使用状況を調査・分析すると共に、ネブライザーの代表的な機種であるジェット式および超音波式について、各種の汚染実験を行い、次のような知見が得られた。 1.ネブライザー内の吸入液の90%から10^1〜10^6CFU/mlの微生物が検出され、汚染菌種としてはブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌が主であった。 2.ネブライザー使用状況の統計的分析より、汚染防止対策として、消毒液を用いたネブライザー部品の洗浄と、吸入液の冷蔵保存が効果的かつ実際的である。 3.ネブライザー部品については、エアロゾル発生箇所である薬液槽の消毒が特に重要と考えられる。それに対して、蛇管およびエアフィルターからの汚染菌の飛散は認められないことから、それらが直接の感染源となる可能性は低いと考えられる。 4.ネブライザー部品の消毒は、0.1%テゴー51、消毒用エタノール、0.1%次亜塩素酸ナトリウム等の汎用消毒剤の常温15分間処理により十分な殺菌効果が得られる。また、乾燥処理も有効な殺菌対策である。 5.ジェット式ネブライザーは超音波式に比べて、一般に発生するエアロゾルの粒径が大きいため、エアロゾル中およびネブライザー部品の汚染菌数が共に高くなるので、注意深い取り扱いを要する。 6.超音波式ネブライザーの薬液カップは、超音波の作用により微細な損傷を受けやすく、作用槽から汚染菌が侵入する場合があるので、定期的な検査が必要である。
|