研究概要 |
血清総コレステロールが,余命や生活機能等の地域在宅高齢者の健康指標に及ぼす影響を解明し,高齢期における血清コレステロールの至適レベルを明らかにすることを目的に横断研究および縦断研究を行い,以下の知見を得た. (1)地域在宅高齢者の総コレステロールの平均値は,男性が175.0mg/dLに対し,女性では201.2mg/dLと有意に高値を示した. (2)地域在宅高齢者の血清総コレステロールは,収縮期血圧,拡張期血圧ともに対し負の関連を示した.また,Body Mass Indexおよび体脂肪率は,総コレステロールが75%tile以上で有意に高かった.血清アルブミンは総コレステロールと有意な正の関連を示した.老研式活動能力指標得点および短縮版GDS得点と総コレステロールには有意な関連を認めなかった. (3)在宅自立高齢者1086名の6年間の総死亡の関連要因を比例ハザードモデルにて検討した結果,総死亡の危険因子として,血清アルブミン低値,男性の喫煙,女性前期高齢期での,やせが抽出された.既知の危険因子を調整した上での至適血清総コレステロールレベルは,男性前期高齢者では156〜182mg/dlであったが,男性後期高齢者では総死亡との関連を認めなかった.女性では,血清総コレステロール183mg/dl未満が総死亡と有意に関連しており,高脂血症診療ガイドラインの適用が有害となる可能性が示唆された. (4)平均72.8歳の男性443名,平均73.5歳の女性620名に対し3年間のコホート研究を行い,生活機能低下の関連要因を多重ロジスティックモデルにて検討した結果,生活機能の低下と総コレステロールレベルに有意な関連を認めなかった.生活機能の関連要因としては,老研式活動能力指標得点で示されるような高次生活機能,運動習慣,握力など生活機能そのものの水準あるいは体力要因が重要であることが示された.
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