研究概要 |
覚せい剤(メタンフェタミン),モルヒネ,コデイン,コカインの標準品につき,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/質量分析法(MS)の諸条件を検討した。まず,HPLCカラム,移動相等の諸条件について検討したところ,カラムはShim-pack MAYI-ODSを用い,移動相は7.5mM酢酸アンモニウム溶液と0.05%ギ酸含有アセトニトリルを用いたグラジエントを行えば,モルヒネ,コデイン,コカインの3種を30分以内に検出することが可能であった。覚せい剤に関してはMSpak GF-310 4Dを用いた方がタンパク質等不純物との分離は良好であった。しかし,Shim-packを用いた方がカラム圧の上昇が少なく,より長時間の連続使用が可能であった。 イオン化法はエレクトロスプレーイオン化を用い,キャピラリー温度を260℃とした場合最も高感度であった。MSとMS/MSを比較したところ,薬物標準品での感度はMSよりMS/MSの方が10倍程度高かった。 これらの結果を基に,カラムはShim-pack,対象薬物はモルヒネ,コデイン,コカインの3種とし,MS/MSにてヒト血清中薬物の検出を行った。試料直接導入法を固相抽出法と比較したところ,試料直接導入法では抽出操作を行っていないにもかかわらず10〜50ng/mlと十分な感度が得られ,特に抽出操作を行わなくても試料直接導入法によって薬物が検出可能であることが判明した。実際例の分析として,コデイン服用の疑いがある死体の血清中コデインの検出を行ったところ分析可能であった。 試料直接導入法では試料前処理が不要なため上記の分析時間がそのまま抽出操作を含めたトータルの分析時間となり,煩雑な操作を行わなくても短時間で薬物が検出できるという利点がある。これと選択性と高感度が得られるMS/MSとを組み合わせることにより,乱用薬物の有用な分析同定法となることが判明した。
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