研究概要 |
造血幹細胞移植後に出現するOX40+ T細胞に関して次のような研究成果が得られた。 1)慢性GVHD患者におけるOX40+ T細胞の診断的意義 われわれは、移植100日以降の患者の末梢血T細胞におけるOX40の発現を解析し、慢性GVHDを発症した患者でT細胞のOX40発現率が有意に高いことを見いだした(Kotani et al. Blood 98 : 3162-3164, 2001)。特にCD4^+ T細胞においては、GVHDに先立って有意なOX40発現率の上昇を認め、その程度と治療抵抗性の間に相関が見られた。また、慢性GVHDとしてMyastenia Gravisを発症した稀な症例においても同様のOX40+ CD4+ T細胞の増加を観察した(Eur. J. Haematol. 69 : 318-320, 2002)。これらの結果は、OX40発現の経時的測定が慢性GVHDの予測や治療法の選択において有用であることを示している。 2)アロT細胞免疫応答におけるOX40/OX40Lの役割 Mixed leukocyte reaction(MLR)の系を用いて、in vitroでalloT細胞免疫応答におけるOX40/OX40Lの役割を解析した。抗OX40L抗体が精製したCD4+ T細胞のアロDCに対するMLRを著明に抑制したことから、アロ反応における最終的なサイトカイン産生とT細胞の増殖反応にOX40シグナルが必須であることが示された(N. Ukyo et al. Immunology, in press)。 3)OX40 ligand(OX40L、gp34)からのシグナルによるRANTES(CCL5)産生 OX40 ligandは樹状細胞や血管内皮細胞に発現する。われわれは、血管内皮細胞のOX40LをOX40で刺激後、発現が増強する遺伝子をcDNA arrayを用いて網羅的にスクリーニングした。その結果、炎症性ケモカインであるRANTESがOX40Lからのシグナルによって発現誘導されることを見いだし、このことをmRNAと蛋白レベルで証明した(Immunol. Lett. 84 : 1, 2002)。最近、GVHDの初期過程でRANTESの受容体であるCCR5を発現したT細胞のリンパ組織への遊走と活性化が必須であることが示されており、われわれのデータとの関連が注目される。 以上の結果からGVHDなどのアロ免疫反応にOX40/OX40L系が重要な役割を果していて、これを制御することが有効な治療法となりうると考えられる。
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