遺伝子導入を臨床に応用するためには造血幹細泡よりも末梢リンパ球を利用するほうが容易なため、マウス脾臓由来リンパ球を対象細胞とした。リンパ球への遺伝子導入は、マーカー遺伝子としてGFPを発現するレトロウイルスを用い、フローサイトメトリーでのGFP陽性細胞の割合により導入効率を評価した。これまではマウスリンパ球への遺伝子導入効率はレトロウイルスを用いた場合、最高でも10%程度であったが、抗CD3、抗CD28抗体を含んだ組換えファイブロネクチンコートプレート上でリンパ球へウイルス感染を繰り返すことにより、GFP陽性細胞を30%以上に上げることができた。 関節局所に細胞を選択的に集積させる遺伝子の候補として、ケモカインレセプターを選択した。ケモカインレセプターとマーカー遺伝子を1つのレトロウイルスベクターに組み込み、2種の蛋白を発現するベクターを作製。ケモカインレセプターに対する抗体は市販品が少なく、発現の確認が困難なため、タグ蛋白を発現するFLAGタグ塩基配列をケモカインレセプター遺伝子の前に組込み、FLAGタグ蛋白結合モカインレセプターとして発現させ、タグ蛋白を確認することにより、レセプターの蛋白レベルでの発現の確認とした。マウス造血系培養細胞株へ遺伝子導入後、細砲蛋白抽出液からの抗FLAG蛋白抗体を用いた免疫沈降ウエスタンブロッティング法にて、タンパクレベルでレセプターが発現していることを認した。 関節炎モデルマウスとしては、DBA/1マウスをウシtypeIIコラーゲンと完全アジュバント、不完全アジュバントを混ぜて免疫し、関節炎、足背の腫長が起きることを確認した。しかしコンスタントに同程度に関節炎を起こすことが灘しく、また関節炎の程度もそれほど著明ではなく、炎症関節の組織所見においても、リンパ球の集簇は軽度で、1足全体からリンパ球を取り出すと、骨髄細胞が大部分を占めてしまい、増殖滑膜中のリンパ球のみを回収することが難しい等の克服すべき問題が多く存在している。
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