研究概要 |
好中球が生成する活性酸素(O_2^-、H_2O_2)は、自然免疫の中核をなし感染防御に大きく貢献している。先天的に活性酸素生成能を欠く慢性肉芽腫症(CGD)患者は、アスペルギルス反復感染に陥り致死的である。一方、免疫能の低下した患者では、重篤な感染症としてアスペルギルス症が問題になっているが、その侵襲性に関しては実体が明らかでない。本研究では、アスペルギルス侵襲性の理解を目的として、好中球活性酸素生成酵素(NADPH oxidase)に対するアスペルギルス病原因子の影響を検討した。先ず、アスペルギルス高感度定量法を開発し、CGDマウス好中球の抗アスペルギルス活性がほぼゼロであることを明らかにした。次に、アスペルギルス病原因子をスクリーニングした結果、グリオトキシンのみが高いO_2^-生成阻害活性を示した。通常、NADPH oxidaseの構成因子は、細胞膜(cyt.b558:gp91-p22複合体)とサイトゾル(p67,p47,p40,Rac2)に分配されて不活性型である。しかし、病原体を認知するとサイトゾル因子がcyt.b558上で集合体を形成してNADPH oxidaseは活性化され、O_2^-を生成し、殺菌に用いられる。この活性化にはp47のリン酸化が中心的な役割を担っている。つまり、p47は、リン酸化後、細胞骨格系と会合しているp67に取り込まれてcyt.b558上へ移行し、活性型NADPH oxidaseを構築する。グリオトキシンはこれら一連のステップを阻害した。最後に、グリオトキシンは、極低濃度で好中球の抗アスペルギルス活性を阻害した。以上の結果より、好中球の生成する活性酸素がその抗アスペルギルス活性にとって必須であること、逆に、アスペルギルスが、病原因子グリオトキシンを用いて防御側である好中球のNADPH oxidaseを阻害してその攻撃から逃れ、侵襲性を発揮することが明らかになった。
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