研究概要 |
免疫学的機序による胆管炎には,原発性胆汁性肝硬変,肝移植の際に起こる慢性拒絶反応,及び骨髄移植後の宿主体移植片病などがあり,いずれも進行性で終末的には肝不全を呈する疾患である。免疫学的機序が想定されているものの,そのメカニズムは解明されておらず,特に肝移植後の慢性拒絶反応は,肝移植の再移植必要例の原因の大半を占め,我が国に移植医療が定着するために,早急に解決されるべき問題である。これらの疾患では肝内胆管上皮細胞(以下IBDEC)が標的となっており,Fasを介したアポトーシスが関与することを明らかにしてきたが、IBDECのうち、小葉内胆管というサイズを構成する胆管が選択的に破壊されるという病理学的特徴の機序は全く不明であった。近年、腎臓における尿細管と同様に胆管にもそのサイズ、解剖的位置によりその細胞生物学的多様性(heterogeneity)が提唱され、実際にこれまで米国テキサス大学Alpini博士との共同研究により、IBDECがそのサイズにより(1)ホルモンに対する増殖性、(2)PKCなどの細胞内シグナル伝達系の活性化機構、(3)胆汁酸による転写活性因子の賦活化などが異なることを明らかにしてきた。これらの研究成果を背景に、「なぜ小葉間胆管という特定の胆管上皮細胞に免疫学的障害が発生するか?」という疑問に答えるため、「アポトーシス関連装置の発現レベルが胆管細胞のheterogeneityにより規定される」という仮説をたて、IBDECのそのheterogeneityに拠ったサブグループに分離・培養することによりその細胞生物学的特性を明かにすることを目標とし、引いてはヒト免疫学的胆管炎の発症機序を明らかにしようとするものである。平成13・14・15の3年間の本研究申請年度での研究により、cDNAμアレイ法という新しい包括網羅的研究手法を用いて、大型・小型胆管細胞に発現される遺伝子の相違を明らかにした。 cDNAμアレイ法を用いて、大・小胆管細胞でおいての遺伝子発現の相違を網羅的に明らかにし、そうのうち重要と思われるものを蛋白レベルで検討をした。本研究は、再現性に富みかつ将来の臨床応用にも貢献し得る基盤研究であると考える。
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