研究概要 |
(1)HBcAgおよびHBeAg発現トランスジェニックマウスにおける抗原提示能及び抗体産生能の比較 HBcAgを発現するトランスジェニックマウス(Tg10c)、HBeAg発現トランスジェニックマウス(Tg31e)、および正常マウスより、B細胞を採取し、これらのB細胞の抗原提示能を比較したところ、この3種類のマウスでは、Tg31eマウスのB細胞では、抗原提示能は低下していたが、Tg10cマウスと正常マウスは同程度であった。また、Tg10cマウスと正常マウスではB細胞はHBcAgを効率良く抗原提示していたが、HBeAgの抗原提示は低かった。抗体産生能では、Tg10cはほぼ正常マウスと同程度であったが、Tg31eはHBc抗体の産生量は1/10に低下し、一方HBe抗体の産生量はほぼ0となっていた。 (2)対象症例におけるHBV-DNAの全塩基配列の解析 ウイルス側の要因を比較するため、無症候性キャリア持続群A群(20例)と肝炎継続群B群(25例)について、血清からHBV-DNAを抽出し、PCR法にて増幅し、サブクローニングを行い、全領域の塩基配列の解析を行った。A群ではほとんどの症例で、核酸変異は認められるもののアミノ酸変異はごく少数であった。これに対してB群ではpre-c領域,core領域,core promotor領域,polymerase領域,envelope領域において、核酸変異数とアミノ酸変異数が多数にランダムに認められた。特にcore領域に多く集中していた。 ウイルス量は有意にA群に高かった。 (3)対象症例の血清・血漿中のサイトカイン・免疫応答関連因子の測定 ホスト側の免疾状態の差違を検討するため、無症候性キャリア持続群A群と肝炎継続群B群について、血清・血漿中のサイトカイン量(IL1,IL2,IL6,IL8,IL12,IFNγ,TNFα,)や免疫応答関連因子発現量(Soluble FAS抗原、sICAM1)の測定を行った。これらの測定では血漿中IFNγ、IL2において、有意にB群で増加していた。
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