研究概要 |
浸潤や転移あるいは薬剤耐性といったの癌の特性に関わる遺伝子異常を解明するため、われわれはCGH(comparative genomic hybridization)法による癌ゲノム解析を推進してきた。CGH法は、複雑な染色体異常を呈する固形腫瘍でも、全染色体を鳥瞰して、染色体の特定領域の欠失、過剰、とりわけ新しい遺伝子増幅領域を探索することができる。本研究では、増幅の標的となり、癌の発生や進展に関与する新たな癌関連遺伝子の同定を行った。 食道扁平上皮癌細胞株のCGH解析から高頻度に14q12-21増幅を認めた。同領域の詳細な地図(amplicon map)をBAC contig mapを基にFISH法で作製し、共通の増幅領域をマーカーD14S1034からL18528までの6.0Mbに限局化した。次いで、その共通増幅領域内の7個の遺伝子(BAZ1A, HNF3A, MBIP, SRP54, NFKBIAおよび2個の未知遺伝子)が増幅により活性化を受ける標的であることを明らかにした(Genes Chromosomes Cancer,2001)。 同様のアプローチで肝細胞癌と肺小細胞癌についても解析した。食道扁平上皮癌と肝細胞癌に共通して13q34領域に遺伝子増幅を認め、その標的遺伝子としてTFDP1,CUL4A, CDC16を同定した。転写因子DP-1をコードするTFDP1の発現亢進はその下流遺伝子であるサイクリンEを活性化して癌の進展に関与する可能性が示唆された(Hepatology,2002)。さらに、肺小細胞癌において高頻度に5p13に増幅を認め、同領域の標的遺伝子としてSKP2を同定した。SKP2の発現亢進はCDK(cyclin dependent kinase)インヒビターp27の分解を加速して、肺小細胞癌細胞の増殖を促進することを明らかにした(Am J Pathol,2002)。
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