研究概要 |
Helicobacter pylori (H.pylori)持続感染と免疫関連遺伝子多型との関連の検討について,平成13年度より平成15年度まで検討を行なった.H.pylori感染者は幼少時にその感染が成立するが,本研究ではH.pylori感染の危険がほぼ同じであったと考えられる同じ地区に住む検診受診者のうち,血中抗H.pylori抗体陽性者と性,年齢をマッチさせた陰性者を対象として,遺伝的免疫機構の違いがH.pylori感染成立に及ぼす影響について検討した.すなわち,全白血球分画よりgenomic DNAを抽出し,Mannose-binding lectin (MBL)の4つのpolymorphic siteのうちの2領域,IL-10,CD14およびTumor necrosis factor-α (TNF-α)のプロモターであるTNF(-308)におけるpolymorphismの解析を行なった.その結果,H.pylori感染陽性者と陰性者間に有意な遺伝的免疫機構の相違を見いだせなかった.このことにより,遺伝的免疫機構の違いは,H.pylori感染の成立に影響しないことが明らかとなった.また,本研究を行なっていく過程で,1)長期のH.pylori感染が血中HDL-コレステロールを低下させること,2)実際の動脈硬化の進展にはH.pylori感染よりも加齢が大きく関与すること,3)動脈硬化の進展と関連があるとされている血中ホモシステイン値にH.pylori感染陽性者と陰性者で差異がみられないことなどを見いだし,それぞれ英文誌に論文発表を行なった.
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