研究概要 |
胃の腸上皮化生と比較して,Barrett上皮の腸上皮化生は1)Barrett上皮腸上皮化生のムチンの形質は胃型(MUC5AC),腸型(MUC2)の混合型が多い.2)Barrett癌とその隣接するBarrett粘膜は腸型,特に大腸型sulfo-Lewis^a mucinを強く発現する.胃の腸上皮化生粘膜では小腸型ムチン(sialyl Tn)がdominantであった.3)Barrett粘膜の増殖活性(CyclinD1,Ki-67)は特殊円柱上皮>移行型上皮>胃底腺型上皮であり,特殊円柱上皮のKi-labeling indexは胃の腸上皮化生粘膜のそれより高値であった.4)Barrett上皮の腸型形質発現はepigeneticalにhomeobox gene family(HOXB6,CDX-1,-2),p16 promoter領域のmethylation或いはdemethylationと関連があった.5)Barrett粘膜の実体顕微鏡・拡大内視鏡観察で腸型,移行型,胃型のムチンを発現する粘膜はそれぞれ特異なpit patternを示す.腸型のpit patternはtubulovillous patternで複雑な分岐を示す脳回転状〜鎖状のパターンで中心部に毛細血管を認める.胃の腸上皮化生粘膜は比較的単純な樹枝状パターンで毛細血管を認めることはまれであった.6)Barrettの腸型,移行型,胃底腺型粘膜および正常重層扁平上皮ではcytokeratin 7/20/14の発現パターンが異なる.腸型Barrett粘膜では腺管の表層がCK20陽性で中〜深層でCK7が陽性であるが,胃幽門部腸上皮化生では一定の傾向は認められなかった.7)Barrett粘膜の腸型形質のpit pattern(tubulovillous pattern)を示す粘膜は狭帯域フィルター拡大内視鏡(Narrow Band Imaging endoscope)により異常な毛細血管networkを示し,8)かつ,この腸型粘膜ではVEGFなどのangiogenetic factorが胃の腸上皮粘膜に比し高発現を認めることが明らかであった. 以上からBarrett粘膜の腸上皮化生は形質的には胃腸混合型でhybrid patternを示し,特に大腸型の硫酸型糖鎖を持つムチンが特徴的であり(ムチン発現と拡大内視鏡所見は対応しており),このような粘膜は細胞回転が亢進し,血管新生因子を高発現し,拡大内視鏡的にも異常な毛細血管network patternを確認できた.
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