研究概要 |
肺炎・肺傷害急性期:幼若好中球が,肺炎初期に骨髄より末梢血中に放出されることを明らかにした.また,様々な刺激に対する幼若好中球の反応は,末梢血中の成熟好中球と違うことを明らかにした. 肺修復期:大阪大学遺伝情報実験センター遺伝子機能解分野で作成された"green mouse FM131"(C57BL/6TgN(act-EGFP)OsbC14-YO1-FM131)の骨髄をもちいたマウス骨髄移植モデルを作成した.このモデルを用い,エンドトキシン肺傷害後の,骨髄由来幹細胞の分布を調べた.その結果,エンドトキシン肺傷害後1週間の時点で,肺胞を構築する細胞が骨髄由来細胞(GFP陽性細胞)に置換されていることを発見した.これらの細胞は,二重染色にて肺毛細血管内皮細胞と肺胞上皮細胞であると考えられた.さらに,エンドトキシン投与により末梢血中に骨髄由来内皮細胞が放出されることを明らかにし,炎症反応時に好中球などの炎症細胞だけではなく幹細胞も骨髄より遊走することが明らかとなった.この幹細胞を抑制すると,エンドトキシン肺傷害後の肺組織修復がうまくいかないことを証明した. 以上の結果より,肺炎・肺傷害後の修復に骨髄由来細胞が重要であることがわかり,その特性を生かせば,肺の修復をより促進させるために骨髄細胞を用いる可能性,また遺伝子治療の単体として骨髄細胞が使用できることが明らかとなり,今後の臨床応用の道が本研究により開けたと考える.
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