研究概要 |
klotho遺伝子ホモ欠損マウス(以下KL^-/^-と記載)は生後4週に肺気腫を発症するとともに、寿命の短縮、動脈硬化、異所性石灰化、骨粗霧症、皮膚真皮層の非薄化、脱毛などヒト老化に類似した多彩な兆候を早期に発現する。肺気腫の発症機序を解明する目的で、肺気腫が生じ始める2週齢の遺伝子発現を、Atlas Nylon Membraneを使用したハイブリダイゼーションにより、KL^-/^-肺と野生型肺とで比較検討した。その結果、2週齢のKL^-/^-肺で発現増加を認めた遺伝子の中に、caspase3(spot intensity : KL^-/^-50,野生型27)といったアポトーシス関連遺伝子、発生に重要なNotchシグナル系との関連遺伝子であるradical fringe homolog Precursor (spot intensity : KL^-/^-83,野生型39)、activin receptor IIA (spot intensity : KL^-/^-35,野生型16)・activin receptor IIB (spot intensity : KL^-/^-34,野生型18)・MAD homolog7 (spot intensity : KL^-/^-22,野生型9)といったTGF-β family proteinとの関連遺伝子を認めた。2週齢KL^-/^-肺において発現低下を認めた遺伝子の中には、serine protease inhibitor 2 (spot intensity: KL^-/^-38,野生型66)といったプロテアーゼインヒビター遺伝子が含まれていた。以上よりklothoマウスにおける肺気腫の成因として、肺の構成細胞のアポトーシスや発生に関与する遺伝子群の異常、さらには肺を傷害より保護するためのプロテアーゼインヒビターの低下などが推察された。
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