研究概要 |
サルコイドーシス発症の要因を探るため,Propionibacterium acnes関与の立場とは異なった観点から起因物質の検討を行う.すなわち,これまでのペプチド抗原の検索とは別に,脂質抗原との関連に焦点を当てるためCD1陽性細胞の関与を検討する. サルコイドーシス(サ症)肉芽腫病変部におけるCD1分子発現の検討のため,サ症患者8例の皮膚病変(1例),リンパ節病変(2例),肺組織病変(1例),筋組織(4例),対照群としての肺組織(6例)を準備した.抗体として,anti-CD1a(O10),anti-CD1b(4A7.6.5),anti-CD1c(L161),anti-CD83(IM2069)を使用した. 各組織において免疫組織化学解析を行った結果,サ症8例の検討材料中4例にCD1陽性細胞が認められた.陽性細胞は肉芽腫内部および近傍に分布していた.一方,対照群では全例陰性であった.CD1陽性例と陰性例の間に病勢との関連は認められなかった.またCD1a, CD1b, CD1cそれぞれの陽性細胞の出現頻度には,一定の傾向は認められなかった.さらに脂質抗原が肉芽腫形成を惹起するか否かの検討のため,動物実験での肉芽腫形成実験を行った.trechalose-6,6'-dimycolateをB57BL/6マウスに対して経静脈投与した.その結果,肉芽腫形成の経時的な増大が確認され,28日では消褪した. 以上,CD1を発現している細胞すなわち脂質抗原を提示しうる細胞の存在の証明,および脂質抗原自体でも肉芽腫形成反応が惹起されうることが示され,サ症における肉芽腫形成反応には,樹状細胞を介したCD1/脂質抗原による免疫応答が関与している可能性が示唆された.
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