| 研究概要 |
【研究目的】
DCを用いた新しい抗結核vaccineを開発するために,まず,同じ細胞内寄生菌であるリステリア菌感染モデルにおいて菌由来のpeptideを遺伝子導入したDCのvaccineとしての有用性を検討する.さらに,リステリア菌のdominant CTL epitopeであるLLO91-99を遺伝子導入したDCのvaccineとしての有効性を,同じepitopeを組み込んだDNA vaccineと比較検討する.
【研究の特色と意義】本研究の特色は,生体で最も強力な抗原提示細胞であるDCを利用して,結核菌などの細胞内寄生菌感染症に対して有用なvaccineの開発を試みることである.未だ完全なvaccineがないヒトの結核感染症において,本研究の成果によって,DCを用いた優れた次世代vaccineが開発できる可能性があり,臨床応用の点からみても大変意義のある研究と考えられる.
【結果】1.Retrovirusを用いてリステリア菌のdominant CTL epitopeであるLLO91-99の遺伝子をマウス骨髄由来のDCに効率よく導入することに成功した.2.この遺伝子導入DCをマウスに接種することによって,LLO91-99特異的なCTL活性とIFN-gamma産生を誘導することが可能であった.さらに,遺伝子導入DC vaccineは生菌免疫に匹敵するほどのリステリア感染症に対する強力なprotective immunityを誘導した.3.遺伝子銃を用いたDNA vaccineと遺伝子導入DC vaccineの有効性を比較したところ,後者が前者に比しはるかに強いprotective immunityを誘導した.
【結論】
細胞内寄生菌感染症に対して,retrovirusを用いて細菌由来のCTL epitopeを遺伝子導入したDCは極めて強力なvaccine効果を発揮することを明らかにした.遺伝子導入DCは,従来のDNA vaccineと比較してもはるかに強い感染防御能を誘導することが証明され,今後,結核菌などの細胞内寄生菌感染症に対する次世代のvaccineとして有望である可能性が示唆された.
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