研究課題
基盤研究(C)
特発性肺胞蛋白症(idiopathic PAP : iPAP)患者の血清中及び気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid ; BALF)中に、サイトカインである顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor ; GM-CSF)に対する中和自己抗体が存在することが報告されている。GM-CSFは肺胞腔内において肺胞マクロファージ(alveolar macrophage : AM)の終末分化を促し、サーファクタント代謝に重要な役割を担っているということが、GM-CSFシグナルのノックアウトマウスの研究からわかっている。GM-CSFノックアウトマウスがPAP類似の病像を呈することから、ヒトiPAPでも抗GM-CSF自己抗体によるGM-CSFシグナル伝達の阻害が疾患発症と関連しているという仮説立てぐ検証した。iPAP患者より分離したAM及びGM-CSF依存性の細胞株であるTF-1を用いたバイオアッセイから、iPAP患者BALF中に、GM-CSF活性を中和する作用が認められた。またiPAP患者血清中およびBALF中に、高濃度の抗GM-CSF自己抗体が疾患特異的に存在することがわかった。さらに、抗GM-CSF自己抗体は、肺胞内に局在しており、一部はGM-CSFと免疫複合体を形成していることが確認された。iPAP患者から分離した自己抗体の結合力、中和能、特異性を検討した結果、自己抗体はGM-CSFとその受容体との間の結合力よりも強い結合力を持っており、非常に強い中和活性をもち、更にGM-CSFの立体構造を認識してその結合は高い特異性を持つことがわかった。自己抗体のエピトープ検索をした結果、自己抗体はGM-CSFの活性中心と言われるドメインを特に強く認識することがわかった。これらの結果から、iPAP患者に特異的に発現している抗GM-CSF自己抗体は、肺内のGM-CSF活性を効果的かつ強力に中和して、GM-CSFのシグナル伝達を阻害することにより、AMの成熟を抑制していると考えられる。
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