研究概要 |
Stiff-man症候群の神経免疫学的検討 目的 Stiff-man syndrome(SMS)はGABA作動性抑制介在ニューロンの機能障害によっておこるとされ,自己免疫疾患と考えられている.臨床的にSMSと診断した患者16例について申請したwestern blot用試薬を用い,自己抗体の有無を検討した. 方法 対象は臨床的にSMSと診断された患者16例(男女比9:7,平均年齢51.4歳).最初にラット脳ホモジネートを用いて患者血清または髄液でwestern blotを行った.次にラット脳ホモジネートと患者血清または髄液を用いて免疫沈降を行い,抗GAD抗体,抗amphiphysin抗体,抗gephyrin抗体を用いてwestern blotを行った.また,患者血清を用いてラット脳及び脊髄の免疫組織化学染色を行った. 結果 自己抗体陽性例は16例中4例で,その内訳は抗GAD抗体1例,抗gephyrin抗体1例,抗amphiphysin抗体3例であった.抗gephyrin抗体陽性例では縦隔腫瘍を合併しており,抗amphiphysin抗体陽性の患者1例には2年後に乳癌が発症した.抗amphiphysin抗体陽性例のうち,乳癌を後に発症した症例では通常のwestern blot,免疫沈降法とも抗体が容易に検出されたが,腫瘍を伴わない症例では通常のwestern blotでは抗体は検出されず,免疫沈降法ではじめて抗体が検出可能となった.免疫組織化学染色により新たに2例の抗体陽性者がスクリーニングできた. 考察 (1)免疫沈降法は通常のwestern blotでは検出不能であった自己抗体を検出でき,SPSの自己抗体検索において有用であると考えられた. (2)抗体陰性例に対してはwestern blot,免疫沈降法に加えて免疫組織化学染色を組み合わせることにより未知の自己抗体を発見できる可能性があり,今後の検討が重要である.
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