研究概要 |
ポリグルタミン病は,翻訳領域上CAGリピートの異常伸長により発症する疾患群である.今まで8疾患が知られているが,すべて遺伝性神経変性疾患である.近年も新しいポリグルタミン病としてSCA12などが報告されており,その数は毎年増加している.病的に伸長した三塩基リピートを同定する方法としては,国外よりRED法.国内よりDIRECT法などの方法が開発されているが,いずれもゲノムDNAを対象としており,そのリピート異常が翻訳領域にあり症状発症に寄与していることを証明することが困難である.ポリグルタミン病の特徴は表現促進現象であるが,既知の遺伝子異常を持たない脊髄小脳変性症(SCD)で明らかな表現促進現象を有する家系を我々は持っている.これらの発症者の皮膚線維芽細胞を用いてポリグルタミンを有するかどうか検討した. 既知のポリグルタミン病6例(SCA1:2例,SCA3:2例,DRPLA 2例),孤発性神経疾患6例(SCD:3例,ALS:2例,AD:1例)および既知の遺伝子異常を認めない家族性SCD 2例を対象とした:十分な説明により患者の同意を文書にて得た後に,3mm径ディスポ・パンチを用いて局所麻酔下に上腕伸側の皮膚生検を行なった.なお,痴呆を合併している患者の場合には家族の同意も得た.DMEM培地を用いて初代培養を行い,継代を1回行った後に凍結保存した.解凍の後さらに1回継代を行って実験に用いた.チャンバースライドを用いて培養を行い,抗ポリグルタミン抗体である1C2抗体を用いて細胞免疫染色を行った.その結果,既知のポリグルタミン病症例群では核周囲の染色性がコントロールと異なっており,ポリグルタミン病のスクリーニングに使用できる可能性が示唆された.今回検討した家族性SCD 2例では,染色のパターンは正常型であった.今後さらに,ウエスタン解析などを行って皮膚線維芽細胞が発現しているポリグルタミン鎖を含む蛋白を同定できるかどうか検討を行っていく予定である.
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