研究概要 |
完全脳虚血モデルを用い、protein kinase C(PKC),Calcium/calmodulin dependent protein kinase II(CaMKII)への増強したアシドーシスの及ぼす影響について、脳保護的に働く免疫抑制薬FK506のPKC, CaMKII, P-tyrosineへの影響をとうして検討した。FK506投与群にてPKCγ,CaMKIIの細胞質より膜分画へのtranslocationの回復が促進しており、vehicle投与群では24時間再潅流時でも有意に上昇していた。FK506投与はアシドーシス増強によるPKC, CaMKIIの動きと正反対の動きを示しており、PKCγとCaMKIIは再潅流24時間でtranslocationが遷延している場合細胞死につながることが強く示唆された。次に、虚血再潅流モデルを用い、アシドーシスを虚血前高血糖および、虚血前中高炭酸ガス血症により増悪させ、虚血をかけ、再潅流時のprotein kinase, protein phosphorylationについて検討した。 高血糖群にてPKCγの細胞質より膜分画へのtranslocationは促進していたが、高炭酸ガス血症群では顕著ではなかった。CamKIIはアシドーシス増強により影響を受けなかった。膜分画のTyrosine phosphorylationと細胞質でのERKは高血糖群でのみ増強されていた。 Cingulate cortexのダメージにprotein kinaseとERKシステムが関与している可能性があり、高血糖はアシドーシスのみでなく、他のメカニズムを介してこれらに影響していることが推察された。 上記の研究を進める過程で、虚血性神経細胞障害の他のメカニズムの解明のためにBcl-xLの誘導体の脳保護作用の追求、また虚血脳への遺伝子の導入の方法についての研究にも参加し成果を得た。
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